● SPUR社 CEO ヘリバート・シャイン氏&物理学者ウォルフガング・ハイドリッヒ博士 インタビュー


インタビューシリーズ第2弾目は、ドイツのフィルム化学専門で世界的に有名な(日本では知る人ぞ知る)シュプール社にスポットを当てました。
SPUR(シュプール)は、小さな会社ですが、技術的には大手デベロッパーメーカーです。彼らは自社名で現像薬品を提供しているだけではなく、AdoxとRolleiのための製品も開発、製造しています。
他ブランドのために作られた製品には、Adox アドテックII、Adox シルバーマックス、Adox Adolux ADX、Rollei RPX-D、Rollei RHC、 Rollei スーパーグレイン..など、多くの有名な現像液を世に出してきました。

私たちは、2014年初夏、SPUR社の現CEOであるヘリバート・シェイン(Heribert Schain)氏、およびパートナーである物理学者のハイドリッヒ博士(Dr. Wolfgang Heidrich)に、これまでとこれからの製品づくり、また現像液とフィルムをテストする方法などについて、メールによるインタビューを行いました。

1: SPURの歴史について簡単に教えてください。

SPUR社が現像を手掛けるスタート時点となったのは、1983年における、フォトエンジニアであるヘリバート・シェイン氏による実験でした。それらの実験で、彼は、古典的な工業現像液において、現像されたフィルム上のディテールの多くが失われていることを発見しました。
これらの実験結果は、技術的な限界は、押し上げることができるということ、つまり、そしてさらなるシャープネス、より微粒子、さらなる解像度、そしてより良いトーンがフィルムから取り出せるという希望を与えたのです。
翌年には、異なるパートナーとのより多くの実験が行われました。古典的なフィルムとだけではなく、航空写真用、交通監視用、X線用、および記録用として製造されたフィルムともです。
物理学者ヴォルフガング·ハイドリッヒ博士がヘリバート・シェイン氏の実験に参加したとき、現像液の開発はより市場指向になりました。 1990年、Dr. Heidrich und Schain GbR社(ハイドリッヒ博士とシェインGbR社)が設立され、製品はSPURの名のもとで販売されました。

2: シュプールは文書フィルムをピクトリアルフォトグラフィに役立つようにできることで知られています。文書フィルムのための現像液の開発は、どのような困難がありましたか?

H.S: 困難や問題は、非常に大きなものでした。道理に合った実用的な現像液を開発するのに、10年以上もの月日を費やしました。

Dr.W: SPURは、ピクトリアルフォト(濃淡の調子のある普通の写真)用途のためにアーカイバルフィルムの現像を可能にした、世界で唯一の会社です。Carl Zeiss(カール・ツァイス)氏と協力し、高解像度の記録を出すことができました。そして、初めて、フィルム解像度が光学系レンズよりも高くなりました。これは、初めて光学系システムの品質を、高解像度フィルムとSPUR Modular UR新現像液でテストすることを可能にしました。
これによって今日、高解像度アーカイブフィルムをピクトリアル写真撮影に使用することができるようになったのです。

3: シュプールには、多くの特別な目的の現像液がありますが、あなたのおすすめ、お気に入りはどれですか?

それを言うのは難しいです。それは、あなたのネガに実現したい効果や、撮影者の個人的な好みに依り異なるからです。
SPUR SLD は、最大感度をフィルムから取得します。
SPUR HRX は、おそらく世界最高の微粒子現像液です。
SPUR Acurol-N は、アート写真のための高希釈可能な現像液です。
SPUR Ultraspeed Vario は、増感&減感(プッシュ&プル)のための現像液です。

私(シェイン氏)の個人的なお気に入りは、高解像度現像液(Adotech II)と、SLDとHRXといった古典的現像液です。また、Acurol N および ウルトラスピード・ヴァリオ のような新しい現像液も、私のお気に入りの一つです。

4: ビギナーにはどの現像液をお勧めしますか?

先日開催されたフォトキナ(Photokina)で、私たちは、ネガと印画紙に使用できるSPUR UFPを紹介しました。 それはネガや印画紙に素晴らしい結果を出す、使い方がいたって簡単な現像液です。ビギナーにとって、本当に素晴らしいものです。

5: SPURは、特にネガ用現像液で知られていますが、さらに印画紙用の現像液の開発計画はありますか?

ペーパー用現像液として、SPUR Paper Dur Greenという、ハイドロキノンを含まない非常に良い現像液があります。また、非常にポップなプリントを作成するAcurol Pがあります。クールなトーンを作り、高希釈で使えるCool Blackは、グラデーションをコントロールするのに優れたペーパー用現像液です。
そして、UFPが出て、私たちが提供する印画紙に使用できる現像液は4つになりました。
私たちは、私たちが設定したこれら4つの現像液をもって別のものは必要ないと考えています。

6: 現像液のマニュアルに、自分が使用するフィルムのための推奨時間が記載されていない場合、どのように現像液とフィルムをテストするか、あなたがお勧めする方法はありますか?
この方法を使えば、濃度計や他の機器の助けを借りずに動作するはずだというような。

それは簡単です。
まず、あなたはライトテーブルまたは同様のものを用意します。最初に、基準となるフィルムを作成します。このフィルムは現像液のマニュアルに記載されているものでなければなりません。
あなたは基準フィルム上に異なるゾーンを露出し、データシートに従って、現像します。このフィルムが、あなたがテストしたいフィルムのための基準となります。
それから、あなたは、テストしたいフィルムの感度をきめて、基準フィルムと同じゾーンシリーズを露出します。
次に現像をし、ライトボードの上で、フィルムを基準フィルムと比較します。
人間の目は簡単に密度における変化を認識できます。ですから、あなたはテストフィルムが基準フィルムと同じ密度になるまでまで、露出と現像を調整することができます。

7: アナログ写真撮影の未来をどのように見ていますか?

新しい現像液のための研究に基づき、アナログ写真撮影はこの15年間で大変進歩しました。
今後、新しい技術的、芸術的領域が検討される可能性があります。たとえば、建物の中の亀裂は、高解像度のアーカイバルフィルムとSPUR現像液で記録されています。
私たちは、アナログ白黒写真撮影に、安定した未来を見据えています。しかし、現在議論されているハイドロキノン禁止のような落とし穴を、EUが強行しないことを願っています。

8:あなたが私たちのお客様にお勧めできる、フィルムと現像液のお気に入りの組合わせはありますか?

これといってありません。フィルムと現像液は、結果が撮影者の希望と一致しなくてはならないからです。
私はステージ写真に高解像度フィルムを使用することはしません。フィルム感度が十分でないからです。
きめの細かいネガを望む場合、私はFuji Acros、Delta 100またはTmax 100フィルムをSPUR HRX現像液と共に使用します。
特定の現像液と特定のフィルムとの組み合わせは、常に少なくともひとつの優れた特性を持っています。
たとえば、新APX 400とHRX現像液との組み合わせでは、特に細粒子にはなりませんが(フィルム感度が高すぎるため)が、素晴らしいグレー値分化を示します。

9: あなたが個人的にお好きなカメラを教えてください。

私は、35mmフィルムをキヤノンのNew F1またはF1で撮影しています。主にフィルム現像液の効率性をテストするので、35mmを使用するのが最も理にかなっているのです。

10: 我々は将来、SPURに何を楽しみにすることができるでしょうか?

私たちは、 弊社製品ユーザーに新しい技術的で芸術的な可能性を与えるため、限界を押し広げた製品づくりに絶えず取り組んでいます。
私は皆さんに、ひとつお約束できます。
それは、SPURの新しい発想による、新しくてスペシャルな現像液を楽しみにしていてください、ということです。

新発想の特別な現像液、、、それはいったいどのようなものなのでしょう!非常にワクワクします。
今後のシュプールに大いに期待したいと思います。
ありがとうございました。インタビュアー:Tim Moog(Silversalt)

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